高齢者になると、様々な心身機能の衰えが生じてきます。
「足腰の痛み」「歩行時のふらつき」「認知機能の低下」
この過程において、食事を作るという作業は大変労力を要するようになります。
そこで味方になってくれるのが「宅食」です。
宅食とは、決まった時間にお弁当や食材を家まで届けてくれるサービスです。
毎日料理の心配をすることなく食事を摂取することができるため、高齢者にとっては有り難いサービスと言えるでしょう。
ただ、宅食サービスにはメリットがある一方、訪問看護師目線でいうとデメリットも存在すると考えています。
メリット・デメリット両者を鑑みて、導入を検討することをオススメします。
この記事でわかること
・宅食サービスのメリットとデメリット
高齢者が宅食サービスを利用するメリット
まず、高齢者が宅食サービスを利用するメリットをお伝えしてまいります。
高齢者が宅食サービスを利用することで得られるメリットは、大きく以下の3つに分けられます。
- 高齢者が宅食サービスを利用するメリット
- ・安全に食事を摂取することができる
・バランスの良い食生活を送れる
・安否確認ができる
安全に食事を摂取することができる
冒頭でも少々触れましたが、高齢者にとって「食事を摂取する」ということは簡単なことではありません。
食事を摂取するためには、「食材を買いに行く」「食材を切る」「食材を炒める」など、難易度の高い様々な行程が必要とされます。
この難易度が高い行程を無理して行ってしまうと、心身機能に様々な弊害を及ぼしてしまう可能性があります。
- 「食材を買いに行く」→足腰が悪い人は歩行時にふらつきがある→転倒の危険性
- 「食材を切る」→高齢者は巧緻性(細かい作業)が低下している→包丁で指を切る→感染症の危険性
- 「食材を炒める」→認知機能が低下している高齢者にとって火の不始末のリスクあり→火災の原因
このように、高齢者が食事を摂取するのには、大きなリスクも隣り合わせにあるのです。
その中、宅食サービスを利用すれば、このリスクをすべて省くことができます。
- 家に直接食事を届けてくれる→転倒の心配がない!
- 出来合い物を届けてくれる→包丁を使い必要がない!
- レンジでチンをするだけでOK→火の不始末の心配がない!
特に一人暮らしや高齢者夫婦のご家庭においては、安心材料になるのは間違いないでしょう。
さらにもう一点、高齢者が食事をする際に気をつけなければならないことがあります。
それは、「誤嚥」です。
誤嚥とは、本来胃にいかなければならない食事や水分が、気管に流れ込んでしまう状態を指します。
誤嚥を起こしてしまうと肺炎を生じ(誤嚥性肺炎)、最悪死に至る可能性があります。
実際、80歳代後半における死因の第3位に「肺炎」が挙げられています(参考:厚生労働省「令和2年(2020年)人口動態統計月報年計(概数)の概況」)
この誤嚥を回避する方法の一つに、「自分に合った食形態」を選ぶことが推奨されています。
- 自分にあった食形態の例
- 水を飲むときにむせる→トロミをつける
食事を飲み込みずらい→柔らかくする・細かく切る
この点、宅食サービスの中には、一人ひとりに合わせた食形態を準備してくれるところがあります。
なかなかトロミをつけたり食材を柔らかくするのは手間を要するので、高齢者にとって需要が高いサービスになっています。
バランスの良い食生活を送れる
高齢者になると、食事のバランスが偏りがちになります。
意外とお米を炊くことは苦にならない高齢者が多いので、タンパク質は摂取できている傾向にあります。
しかし、いわゆる「おかず」が質素なものになってしまいます。
訪問看護師をしていて感じるのが、おかずを漬け物などで済ませてしまうことです。
これでは体に必要なビタミン・食物繊維・アミノ酸などを摂取することができません。
これらをバランスよく摂取するには、野菜や魚を取り入れることが求められます。
その点、宅食サービスを利用すれば野菜や魚はもちろん、お肉や根菜類までバランス良く食生活を送れるようになります。
おかずのみを宅配してもらえるサービスもあるので、ご飯を炊けるという人はそのような業者を選んで利用するようにしましょう。
安否確認(見守り)ができる
高齢者はいつ体調不良に陥るか分かりません。
核家族化が進む昨今、孤独死という言葉も一般化されてきました。
特に一人暮らしをしている高齢者を持つ家族は心配がつきまとうでしょう。
その点、宅食サービスの中には安否確認(見守り)をしてくれるところがあります。
つまり、置き配ではなく「必ず対象者に会って食事を渡す」ことをしてくれます。
「あれ?いつもより元気がないな」「ん?いつもいる時間なのに出てこないな」
このように、宅食サービスを利用することで定期的な安否確認や病気に対して早期発見をすることができます。
もちろん、安否確認(見守り)を行なっていない業者もあるので、不安がある人はしっかりと対応している業者を選ぶようにしましょう。
高齢者が宅食サービスを利用するデメリット
次に、高齢者が宅食サービスを利用するデメリットを挙げます。
ここまで聞くと、「メリットばかりでいいサービス!」と思うかもしれませんが、高齢者にとっての宅食サービスにはデメリットも付いてくるのでしっかりと把握しておきましょう。
デメリットは大きく以下の3つに分けられます。
- 高齢者が宅食サービスを利用するデメリット
- ・健康寿命を縮める恐れがある
・味に飽きる可能性がある
・自炊するより料金が割高になる
健康寿命を縮める恐れがある
先ほど、食事を摂取するということは難易度が高いと申しましたが、逆に「いいリハビリ」になっている可能性もあります。
つまり、食事を摂取する行程が健康に繋がっているという可能性です。
例えば、先ほど挙げた例をリハビリ目線で考えてみます。
- 「食材を買いに行く」→歩行練習→足腰の筋力が維持できている
- 「食材を切る」→巧緻性(細かい作業)練習→細かい動作ができるようになる
- 「食材を炒める」→常に火加減を考えなければならない→認知機能を保つことができる
このように、高齢者にとっての難しい動作は、メリットとデメリットが混在しているのです。
宅食サービスを導入するポイントは、「安全にその動作ができているかどうか」です。
安全にその動作ができているのであれば、健康維持のためにも宅食サービスを導入するのは時期早々かもしれません。
逆に、周りから「ちょっと今の危ないよ!」と言われたり、「歩くの怖くなってきたな…」など自分で怖さを感じたら、積極的に宅食サービスを利用していきましょう。
この際、いきなり毎食導入するのではなく、まずは1食から導入することをオススメします。
味に飽きる可能性がある
「宅食の弁当はすぐ飽きるんだよな」
訪問看護師をしていると、よく利用者さんからこのような声を聞きます。
確かに、私が見ても「これだと飽きるよね…」と思う宅食サービスもしばしば…。
そのため、「宅食サービス=味に飽きやすい」のも事実として間違いではないと考えています。
しかし、昨今は新型コロナウイルスの影響もあり、数多くの企業が宅食サービスに参入しています。
中にはレストランで出されるような、バリエーション豊富で味も確かな宅食も少なくありません。
以前まで見られていた「宅食といえばあそこしかないよね」という事象はなくなっており、私たちは多くの業者から選ぶことができるようになりました。
また、「消費者契約法」の観点から、一度契約した宅食を解約しやすくなったことも追い風と言えるでしょう(参考:消費者庁「消費者契約法」)。
つまり、一度頼んで飽きたとしても、解約して次の宅食サービスに切り替えることが容易になったということです。
当サイトでも、各宅食サービスの契約方法〜解約方法まで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
自炊より料金が割高になる
いざ宅食サービスを導入しようとなった場合、一番ネックになるのが「料金」だと思います。
「宅食サービス=高い」
このような風潮は確かにありますが、私は「ちょっと待って!」とお伝えしたいです。
というのも、高齢者が1回に摂取できる食事量はそれほど多くありません。
しかし、スーパーで買い物をすると、どうしても必要以上の材料を買わなければならない場面に遭遇します。
特に野菜やお肉はバラ売りをしているところは少なく、仕方なしに破棄をすることも多くなってしまいます。
このように、「食事量が少ない」「特に1人〜2人暮し」の高齢者にとっては、宅食サービスの方が安く抑えられる可能性が高いのです。
中には「ワンコイン」で頼める宅食サービスもあるので、料金に不安がある人は値段の安いサービスに絞って検討することをオススメします。
高齢者が宅食サービスを利用するメリットとデメリットまとめ
- 高齢者が宅食サービスを利用するメリット
- ・安全に食事を摂取することができる
・バランスの良い食生活を送れる
・安否確認ができる
- 高齢者が宅食サービスを利用するデメリット
- ・健康寿命を縮める恐れがある
・味に飽きる可能性がある
・自炊するより料金が割高になる
このように宅食サービスには一長一短があります。
訪問看護師目線でいうと、「まずは1日1食を導入して様子をみる」から始めてみることをオススメします。
そして、宅食サービスを導入したことによって「どのように生活が変わったか」を客観的に見つめることが重要です。
「あれ?料理の楽しみが減っちゃったな…」という人は解約をするべきでしょうし、逆に「料理の負担から解放されて身体が楽になった」という人は継続するべきでしょう。
訪問看護師が厳選!高齢者にオススメの宅食サービスは?
高齢者が宅食サービスを選ぶにあたっては、味・コスパ・ボリューム・制限食の有無など様々な要素を考えなければなりません。
詳しくはこちらの記事(訪問看護師が厳選!高齢者にオススメの宅食サービスと頼むときの注意点まとめ)で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
訪問看護師の私が思う、高齢者にオススメの宅食サービスは「ワタミの宅食」です。
世間では「ひどい」という声も聞きますが、さすが飲食チェーンを展開しているだけあって万人が受ける味付けの良さがあります。
また、1食あたりの料金が390円〜とコスパに優れているのも嬉しいポイントです。
写真・動画多数でレビューしているので、ぜひ参考にしてみてください!
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